温度管理によって食中毒を防ぐには

食中毒の原因になる細菌やウイルスにはサルモネラ菌や黄色ブドウ球菌の他に腸炎ビブリオ菌や腸管出血性大腸菌、ノロウイルスなどがあります。細菌は気温が高くなる春から夏にかけて繁殖しやすく、ウイルスは気温が低くなる秋から冬にかけて流行します。食品関連企業が食中毒などのトラブルを防ぐためには、季節に関わらず適切な方法で温度管理を行い細菌やウイルスの繁殖を防ぐ必要があります。基本的に細菌やウイルスの多くは加熱によって処理できるので、トラブルを防ぐには徹底した温度管理が重要です。

食中毒の主な症状は下痢や腹痛の他にも発熱や吐き気などで、重い場合には命に関わることもあります。例えば腸管出血性大腸菌は加熱が不十分な肉や生野菜などに付着していて、食後12時間から60時間で激しい下痢や腹痛などの症状が現れます。腸管出血性大腸菌による被害は加熱すれば防げますが、食中毒になり症状が重いと命を落とすこともあるので注意しなければなりません。黄色ブドウ球菌は人間の皮膚や鼻、口腔内にいる細菌で傷やニキビなどに触れると手に付着します。

この細菌自体は加熱によって処理できますが、毒素は熱に強いため熱を加えても残ってしまいます。食中毒による被害を防ぐためには、温度管理だけでなく総合的な衛生管理が重要になります。日本では2021年6月から、HACCPという新しい衛生管理手法の導入と運用が全ての食品関連企業に義務付けられました。この手法では微生物など危害要因の分析に基づいて適切なルールを定め、全工程を細分化して衛生管理を行います。

HACCPは全工程で温度を含めた総合的な衛生管理を行うため、食品の品質を高め食中毒などのトラブルを防ぐことができます。