食品を扱う企業は適切な温度管理によって細菌やウイルスの繁殖を抑え、不良品の発生を防がなければなりません。誤って不良品が出荷され食中毒が発生すると、訴訟などのトラブルに発展して高額な損害賠償を請求される可能性があります。企業のブランドイメージも損なわれるため営業活動にも大きな影響が及びます。円滑な事業運営を行うためには、適切な温度管理によって食品の安全を守らなければなりません。
食中毒の原因となる細菌やウイルスは基本的に加熱すれば繁殖を防ぐことができます。黄色ブドウ球菌も加熱すれば繁殖を防げますが熱に強い毒素を作るため注意が必要です。この細菌は人間の皮膚や鼻、口腔内などに生息しており傷やニキビに触れると手に付着します。食品を加熱した後に黄色ブドウ球菌の毒素が付着すると、食後30分から6時間ほどで吐き気や腹痛などの症状が現れます。
トラブルの発生を防ぐには原材料の仕入れから出荷まで、全ての段階で食品の温度管理を適切に行うことが大切です。日本では2021年6月から、全ての食品関連企業にHACCPという新しい衛生管理手法の導入と運用が義務付けられました。この手法では原材料の仕入れから出荷までの全工程を細分化してリスク管理を行います。加熱や冷却など特に重要な工程は重要管理点と呼ばれ、連続的かつ継続的な監視と記録が行われます。
HACCPを導入すれば食品の衛生管理を適切に行うことができるだけでなく、万が一トラブルが起きたとしても原因となった工程を素早く究明して迅速に対処できます。食品関連企業が食中毒などのトラブルを防ぎ円滑な事業運営を行うため、HACCPが重要な役割を果たしています。